No.341


【生物】人体と酸素

 ざっくりとしたメモ。

酸素は何に使われるのか

 ブドウ糖(脂質)からエネルギーの源であるATPを作り出すのに必要。
 たくさんエネルギーを使う部位はエネルギーを多く消費するのでそのぶん酸素の消費も大きくなる。全力失踪中の筋肉などでは多く消費される。

 ブドウ糖をエネルギーに変換する(ATPを作る)のは二種類の方法がある。

  • 好気的解糖 ブドウ糖を酸素を使って酸化させてATPを作り出す。効率が良い。
  • 嫌気性解糖 ブドウ糖を使わずにATPを作り出せるが効率が悪い。好気的の5%程度。非常用。

 酸素を使うのは前者の方法。人間が呼吸して行う一連のサイクルで普通に行われている。


酸素が足りなくなるとどうなるか

 酸素が足りなくなった部位はATPの生産が足りなくなり、生化学反応が順調に行われなくなる結果、疲労・劣化していく。
 「疲労・劣化」は様々な形で現れる。筋肉で不足すれば

筋収縮:力が出なくなる 生合成:修復されなくなる

 という症状が出るだろう。

 Wikipediaに医薬品としてのATPの使用例が記載されており

アデノシン三リン酸

・調節性眼精疲労の症状改善 ・消化管機能低下が起きている者の慢性胃炎の症状改善 ・心不全の症状改善 ・頭部外傷後遺症の症状改善

 この記述からは細胞修復系の効能が顕著なのだと読み解ける。


体内で必要とされる酸素の量

 これに関しては明確な資料を見つけられなかったので計算で出してみる。
 計算は後ほど記載するとして、数値としては概ね

  • 1時間あたり約15リットル
  • 1日あたり318リットル

 と考えられそうだ。

算出

 厚生労働省の資料「特定保健指導の実践定期指導実施者育成プログラム」によると

 体内で消費されるエネルギーの割合は、体重70kg体脂肪率約20%の男性で

  • 骨格筋:22%
  • 脂肪組織:4%
  • 肝臓:21%
  • 脳:20%
  • 心臓:9%
  • 腎臓:8%
  • その他:16%

 となっている。

 エネルギー生産が好気的解糖(ブドウ糖と酸素からATPを生産する)ものだけと仮定すると、脳の消費エネルギーから身体で使われる酸素量を逆算することができる。

 大阪大学医学部の研究によると大脳皮質のでの酸素消費量は3.13ml/100g/分とのこと。

 成人男性の脳の重さを1400gとし、脳全体(海馬や小脳など)も大脳皮質の酸素消費量と同じと仮定すると、

  • 100gあたり:3.13ml/分
  • 成人男性の平均1400gだと:約44ml/分
  • 1時間あたり:約2.65リットル

 となる。

 先の各臓器ごとの酸素消費割合によると脳で使うエネルギーは全身の20%であり、エネルギーの消費割合=酸素の消費割合と仮定すると、全身では1時間あたり約13.25リットルの酸素が必要と算出することができる。

  • 1時間あたり:13.25リットル
  • 1日あたり:318リットル

高濃度酸素吸入、高圧酸素治療

 [東京医科歯科大学医学部附属病院の資料(http://www.tmd.ac.jp/med/hbo7/topics.html)が詳しい。

東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部 当院の高気圧酸素治療と、いわゆる「加圧カプセル」との違いについて

 資料によると下記のような効果がある。

  • 高濃度酸素吸入 通常の呼吸で酸素の供給が追いつかない時に血液中の酸素量(酸素分圧)を一定に保つために使われる。
    通常の呼吸で問題の無い人間には毒なだけ。

  • 高圧酸素治療 ヘモグロビンにより運ばれる酸素(結合型酸素。全体の97%)ではなく物理的に血液に溶け込んだ酸素(溶解型酸素。全体の3%)を増加させることができる。
    2.8気圧で溶解型酸素は20倍以上になり、全体としても3割以上の向上が見込まれる。


関連情報

筋肉細胞で消費されるエネルギーの順番

 信州大学の公開している生化学の教材によると以下の順番でATPが作成されていく。

  1. 1番目:クレアチンリン酸による作成 10秒くらいで枯渇。大パワー。
  2. 2番目:グリコーゲン(グルコース)を分解して生成 30秒くらいで枯渇。酸素は使わない(はず)。
  3. 3番目:クエン酸回路 グリコーゲンからATPを作成した生成物のピルビン酸をクエン酸回路(という生化学反応の仕組み)で回すことで、さらにATPを生産する。この過程は酸素を使う。酸素が足りないと分解されないピルビン酸が残り、いわゆる乳酸が溜まる状態になる。