No.76


【気象現象】大雨の種類とその規模

大雨と呼ばれる現象はどういったモノなのか

 最近よく聞く気象異常という言葉。その最たるものが「記録的猛暑」と「ゲリラ豪雨」、そして「記録的降水量」ではないだろうか。

 はたして記録的な降水量とはどれ程のものなのか。ちょっと調べてみた。ついでに雨に関しての呼び方もいろいろあって解り辛いことこの上ないので簡単に整理した。

※参考
Wikipedia 集中豪雨
気象庁 用語解説
気象庁 歴代全国ランキング


呼び名について

 短時間に局所で大雨を降らす現象は、よく聞く「ゲリラ豪雨」は正式名称ではない。正確には「局地的大雨」と呼ぶのが正しい。気象庁の定義は下記の通り。

 急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨。「局地的な大雨」とも言う。  
 単独の積乱雲が発達することによって起き、大雨や洪水の注意報・警報が発表される気象状態でなくても、急な強い雨のため河川や水路等が短時間に増水する等、急激な状況変化により重大な事故を引き起こすことがある。

 長時間にわたって大雨が降り続く現象は、よく聞く「集中豪雨」であっている。気象庁の定義は下記の通り。

 同じような場所で数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨。  
 積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返すことにより起き、重大な土砂災害や家屋浸水等の災害を引き起こす。

局地的大雨の雨量

 局地的大雨の雨量は気象庁が提供している「歴代全国ランキング」の「最大10分間降水量」が参考になる。1~3位までを抜粋させていただく。

順位 場所 年月日 10分あたりの降水量 1時間換算の降水量
1 新潟県室谷 2011/7/26 50.0mm 300mm
2 高知県清水 1946/9/13 49.0mm 294mm
3 宮城県石巻 1983/7/24 40.5mm 243mm

 局地的大雨は山間部や海岸沿い、都市部など様々な所で発生している。つい「ゲリラ豪雨」と聞くと都市部を想像してしまうが、実際にはそんなことはないのがよくわかる。(1位の新潟県室谷は山間、2位の高知県清水は岬)
 また、東京などの発達した都市部は局地的大雨が多いように思われるが、この表のトップ20に関東は神奈川県横浜市が一件しかランクインしていない。意外だ。

 この一位の記録、1時間あたり300mmの降水量を再現できる施設が防災科学技術研究所の大型降雨実験施設だ。

防災科学技術研究所 大型降雨実験施設

 その圧倒的な雨量は下記の映像からご覧頂ける。

防災科学技術研究所 大型降雨実験施設で1時間あたり300mmの豪雨を体験

 なお、10分あたりの降水量は主にその場に発生した積乱雲によってもたらされるものであり、その場の直上空間に含まれる水分が全部雨になったと仮定した「可降水量」という数値が限界になると考えられる。
 日本での可降水量は概ね最大50mmになることが研究により明らかになっているので、10分間50mmという記録はほぼ上限の数値なのだと思われる。

Wikipedia 可降水量
日本におけるGPS可降水量の季節変化の特徴 ※p.6,7
国土地理院GPS観測網から推定された可降水量 ※p.24


集中豪雨の雨量

 集中豪雨の雨量も気象庁が提供している「歴代全国ランキング」の「最大1時間降水量」が参考になる。1~3位までを抜粋させていただく。

順位 場所 年月日 1時間あたりの降水量 1日換算の降水量
1 千葉県香取 1999/10/27 153mm 3,672mm
1 長崎県長浦谷 1982/7/23 153mm 3,672mm
3 沖縄県多良間 1988/4/28 152mm 3,648mm

 …3.6mとかもう感覚的に想像すら出来ないレベルだ。6時間で深さ90cmのプールが満水になる雨量、と言い直してみてもピンとこない…

 1位を記録した千葉県香取市は何の変哲もない平野のようだが

千葉県香取市地図

 猛烈な低気圧の直撃を受けてこのとんでもない記録を打ち立てた。

デジタル台風:最大1時間降水量 香取(千葉)153ミリ - 過去の天気図

 なお、2位の長崎県長浦谷の記録は「昭和57年7月豪雨」と命名されるほどの被害をもたらした大雨によって記録された。

昭和57年7月豪雨

※「日降水量」も参考になるかもと考えたのだが、気象庁の定義が「数時間」からなので「1時間降水量」の方を使用した。