No.501


【将棋】将棋ソフト不正使用疑惑騒動の概要

思うところはいろいろあるが…

将棋ソフト不正使用疑惑騒動

 本事件は2016年末から2017年初に起きた事件である。
 一棋士の思い込みだけで証拠もなく告発が成立し、疑われた相手の最高位タイトルへの挑戦権が剥奪されるという、世間一般の常識からは懸け離れた事件であった。マスコミも権威に同調するかのように犯人ありきで煽りまくっていたのが胸くそ悪い。
 将棋への暗いイメージが世間に浸透しかけたが、藤井聡太七冠(2025年4月現在)が同年末(12/24)からデビューし、その後の破竹の快進撃でこの事件は吹き飛ばされてしまったかのようである。

 まあそんなわけで、この事件を知らない人への説明用にメモ。
 個人的にはどっちが正しい・間違っているではなく、とにかく過程に問題がありすぎると思う。
 将棋は好きだし、事件に関して思いはいろいろあるけど、個人的な感情はなるべく書かずに、必要な事象を時系列だけ記載しておく。登場する人物も直接の関係者および重要な発言を行った人物だけにとどめている。


時系列

日時 内容
7月26日 久保利明九段が三浦弘行九段の対局中の行動を勘違い(異常に長い離席があった→無かった)して不正ソフト使用の疑惑を抱く。
7月29日 久保利明九段が三浦弘行九段およびソフト利用に対する告発を将棋連盟に対して行う。
8月4日 将棋連盟から全棋士に不正ソフト使用や怪しまれるような行動を取らないよう通達がされる。
8月26日、9月8日 竜王戦挑戦者決定三番勝負の第二戦と第三戦で将棋連盟理事が三浦弘行九段を監視するが特に問題は見つからなかった。
9月8日 三浦弘行九段が丸山忠久九段を2勝1敗で下して竜王戦の挑戦者となる。なお、丸山忠久九段は一貫して疑惑を否定している。
10月3日 渡辺明竜王が順位戦A級で三浦弘行九段に負ける。
渡辺明竜王が久保利明九段戦の結果、観戦記者の小暮克洋氏や千田翔太五段の意見、将棋ソフトとの指し手の酷似などから、三浦弘行九段が不正を行っていると確信する。
10月10日 渡辺明竜王の呼びかけで島常務理事の自宅に谷川浩司会長以下タイトルホルダーが集まり協議をする。渡辺明竜王は三浦弘行九段が不正を行っているので対戦しないと主張する。三浦弘行九段は疑惑を伝えられ翌日の常任理事会への主席を求められる。
10月11日 常任理事会で三浦弘行九段に説明が求められる。三浦弘行九段は調査を了承し、自らのPCやスマホの画面写真などを提出(詳細不明)。調査中に休場するかは明日連絡するとした。なお、休場に関しては双方の話の食い違いがある。
10月12日 三浦弘行九段は休場しない旨を将棋連盟に通達したが、将棋連盟は刻限の15時までに休場届が出されなかったという理由で公式戦出場停止処分とした。その結果、竜王戦、王位戦、朝日杯など様々な棋戦への挑戦権が失われた。2016年度のA級順位戦も残りは不戦敗となった。
10月13日 将棋連盟が本件に関する調査終了を公表、これ以上本件の調査は行わないと明示する。
10月13日 橋本崇載八段が三浦弘行九段をヤツ呼ばわりしつつ「1億%クロ」とツイート。橋本崇載八段はその前から名前は明記せずカンニング疑惑を発信している。
週刊誌などが10/10の開合の中身をかぎつけて、あることないこと騒ぎ立てる。世論も巻き込んで騒動になる。当事者の渡辺明竜王もマスコミの取材に応じている。週刊文春は羽生善治三冠の発言を捏造するが本人(正確には奥様)のツイートで否定される。
10月19日 千田翔太五段が将棋ソフトとの一致率をネットに発表。統計学的に有効ではないデーターであると検証され、後にデータは消される。
10月21日 将棋連盟による棋士への臨時説明会が開かれる。
10月27日 世論を受けて将棋連盟が方針を変更、第三者委員会を設置する。
12月26日 第三者委員会が不正行為の証拠はないと発表。出場停止処分は混乱を防ぐためやむを得なかったと結論を出す。
1月16日 日本将棋連盟の谷川浩司会長および島朗九段が辞任する。
2月26日 将棋観戦記者小暮克洋氏の依頼を受けた弁護士が渡辺明竜王弁護の文章をホームページに掲載。怪文章として話題となり即日掲載取りやめ。
2月27日 当事者の処分に納得しない棋士達の声で臨時総会が開かれる。総会では青野照市九段、中川大輔八段、片上大輔六段が解任される。
5月24日 三浦弘行九段と日本将棋連盟の和解成立。

※段位や役職などは当時のもの


主な疑惑について

  • 不自然に長い離席があった → 勘違いでそんな離席はなかった
  • 離席が多い → 他の棋士も離席が多い人はいる
  • 不自然にソフトとの一致率が高い → 他のトッププロも高かった
  • 不自然にソフトとの一致率が高い → そもそも統計学的に有効なデータではなかった